かつては土のグラウンドが当たり前だった学校に、芝生の校庭がじわじわと広がりつつあります。裸足で走り回れる開放感や、夏場の照り返しをやわらげる効果などが期待され、子どもたちにとってより快適な環境をつくろうという動きが背景にあります。また、地域に開かれた場として芝生校庭を活用することで、学校と地域社会とのつながりを深める取り組みも見られるようになっています。こうした流れは、国や自治体の推進事業が後押ししていることもあり、今後も一定の広がりを見せると予想されています。
しかし、芝生化は一見するとメリットばかりに思えますが、実際に運用を始めると、思わぬ課題や負担が浮かび上がることも少なくありません。導入にあたっては、見た目の美しさや理想だけではなく、運営側が背負う現実的なコストや労力も冷静に見極める必要があります。本記事では、芝生校庭のデメリットを具体的に整理し、判断に役立つ情報をお届けします。
芝生化がもたらす意外な落とし穴とは
芝生の校庭には、爽やかな景観や子どもたちの安全性向上といった期待が寄せられています。しかし、実際に導入してみると、思いがけない問題に直面するケースも少なくありません。まず大きな落とし穴として挙げられるのが、芝生のコンディション維持の難しさです。踏み固められた部分は枯れやすく、夏場には水不足、冬場には休眠期による劣化が避けられず、年間を通じて均一な状態を保つにはかなりの手間と工夫が求められます。
また、芝生の上での活動には制限が生じることもあります。たとえば、サッカーや運動会のような激しい運動では芝がはがれやすくなるため、使用を制限したり、別途補修費用を見込んだりしなければなりません。さらに、土のグラウンドと異なり、芝生には病害虫のリスクも存在します。害虫被害や病気が発生すると、対応が後手に回った場合に全面的な張り替えを余儀なくされることもあり、初期の想定以上の負担が学校側にのしかかる可能性があります。
一見すると「緑の絨毯」に見える芝生校庭も、導入後にはさまざまな現実問題が顔を出すということを、あらかじめ知っておく必要があります。
手間もコストも想像以上?芝生管理の現実
芝生校庭を美しく保つためには、想像以上の手間と費用がかかります。芝生は一度植えれば自然に育つものではなく、日常的なメンテナンスが欠かせません。最も基本的な作業は芝刈りです。成長スピードが早い季節には、週に1回以上の頻度で刈り込む必要があり、これを怠ると芝が伸びすぎてしまい、病気や害虫の温床になりやすくなります。また、芝生の根が健全に育つためには定期的な施肥やエアレーション(土壌に穴を開けて通気性を改善する作業)も欠かせません。
費用面では、芝刈り機や施肥器具といった専用道具の導入コストに加え、肥料や目土、農薬などの消耗品費も毎年発生します。加えて、芝生面積が広くなると、管理作業を外部業者に委託する必要が出てくる場合もあり、これがさらに運営費用を押し上げます。たとえば、年間の維持管理費が数十万円から百万円単位に達するケースも珍しくありません。
管理負担は作業面だけにとどまらず、気象条件に左右されるリスクも抱えています。たとえば長雨が続けば芝生の根腐れ対策、猛暑が続けば乾燥対策が求められ、気象に応じて細かな調整を迫られる場面が増えます。芝生化を検討する際は、導入時の初期費用だけでなく、日々積み重なる維持費と人的負担を現実的に見積もることが欠かせません。
子どもたちにとって本当に安全?見過ごせないリスク
芝生の校庭は、転倒時の衝撃を和らげることから「安全性が高い」と言われることがよくあります。確かに、硬い土のグラウンドに比べればクッション性は高く、小さなけがを防ぐ効果は期待できます。しかし、芝生であればすべてが安全というわけではありません。まず、芝生がはがれたり、地面に凹凸ができたりすると、つまずきや転倒のリスクがかえって高まる場合があります。特に管理が追いつかない場合や、利用頻度が高すぎる場合には、足場の不安定さが目立つようになります。
また、芝生にはアレルギー反応を引き起こす可能性もあります。芝に含まれる花粉やカビが原因となり、皮膚のかゆみや鼻炎などを訴える子どもが出るケースも報告されています。芝生の手入れに使用する農薬や除草剤についても、適切に管理されなければ健康被害の懸念が生じるため、細心の注意が必要です。
さらに、雨天後のぬかるみも無視できないリスクです。土壌の排水性が悪いと、校庭の一部がぬかるんでしまい、滑って転倒する事故が起こる危険性が高まります。このように、芝生には一定の安全性向上効果があるものの、管理状況によっては逆に新たなリスクを招くことがあるのです。芝生化に踏み切る前には、見た目の印象だけでなく、実際の利用環境まで冷静に見極める必要があります。
芝生を維持できなかった時、何が起こるのか
芝生の校庭は、適切な管理があってこそ美しい景観と安全な環境を維持できます。しかし、予算不足や人手不足によって管理が行き届かなくなった場合、芝生は急速に劣化していきます。まず目に見えて起こるのは、部分的な枯れや剥がれです。芝が薄くなると裸地化が進み、土ぼこりの発生やぬかるみが問題となります。もともと土のグラウンドより芝生の維持が難しいことを考えると、一度荒れた校庭を元の状態に戻すには、さらに大きな費用と労力を要することになります。
特に、広範囲にわたる芝の張り替え作業が必要になると、施工費だけで数十万円以上かかるケースもあります。しかも、張り替え後もすぐに使用できるわけではなく、芝が根付くまで一定期間立ち入りを制限しなければなりません。その間、運動会や授業に支障が出るリスクも無視できません。
さらに深刻なのは、劣化した芝生が「使い勝手の悪い空間」になってしまうことです。利用者にとって使いづらい場所は、自然と敬遠され、校庭全体の活用度が低下します。芝生を導入した当初に期待された「子どもたちが伸び伸びと遊ぶ姿」とは、まったく逆の結果になりかねないのです。こうした事態を防ぐためにも、芝生化に踏み切る前には、維持管理の継続可能性を慎重に見極めておくことが欠かせません。
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校庭芝生化を「成功」に変えるために押さえておきたいこと
校庭の芝生化には確かに多くの課題が伴いますが、正しい理解と準備があれば、そのメリットを最大限に引き出すことも可能です。まず重要なのは、芝生管理の現実を直視したうえで、あらかじめ年間の維持費用や作業計画を具体的に立てることです。専任の管理担当者を置くか、外部業者に定期的なメンテナンスを委託するかといった体制づくりも検討しておくべきでしょう。
次に、芝生の利用ルールをきちんと整備することも不可欠です。たとえば雨天後には使用を制限する、激しい運動は専用エリアで行うなど、芝生を守るための運用ルールを全校で共有しておくことで、劣化リスクを最小限に抑えることができます。また、芝生の種類や土壌改良の方法を慎重に選定することで、自然環境に応じたより長持ちしやすい芝生環境を整えることも可能です。
さらに、芝生化を一時的なブームで終わらせないためには、日々の小さな管理の積み重ねと、関係者全体の意識共有が欠かせません。担当者だけに負担を押しつけるのではなく、学校全体で「芝生を育てる」意識を持つことが、長く美しい校庭を守る鍵となります。
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